第1回 「新参者が行く山のこと」

  私は鎌倉に住み着いて5年とチョットの新参者です。
 10年、15年住んでも新参者と言われるここでは新参者の内にも入らないのでしょうな。
 しかしここはいい所です。 山あり、海あり、歴史ありですから住むにはロケーションとして云う事なし。
 あくまでもロケーションとしてでありまして、色々気に入らない点も有りますがそこは新参者、口は慎
 しまなくてはいけません。「いいところを見つけて穏やかに暮らすのが長生きの秘訣」と死んだおじいち
 ゃんが申しておりましたです。 遺言ですな。
  そこで随分あちこちと歩き回ってみましたね、このわずか5年の間にですが。 いいとこは色々有りま
 すな。 例えば、我が家のすぐ近くの衣張山なんてぇのは実にいい所ですが「平成巡礼道 衣張山ま
 で15分」なんてひっそり案内が出ているだけで、ガイドブックでもあんまり取り上げてくれないので観光
 客が来ないからいいんですよ。 特に春、菜の花の咲くころの夕暮れ時にでも行ってごらんなさい。
 まあ、夢見ているような気分になれますからね。(トップページの写真がそれであります。)
 真っ黄色の花がバーッと咲き、早春の緑の山とのコントラストが実に鮮やかで目が醒めます。 そして、
 夕暮れになると紫のもやが立ち込めそれこそ、そうです「♪菜の花畑に 入日薄れ 見渡す山の端
 かすみ深し〜」なんて唄が出てきちゃうんですよ。 (実は、私はこの歌が世界一好きなんです。)
 そして眼下には夕陽を映してきらきら光る海が広がり小さな船の影が点々と見え、そのずーと先には
 江ノ島が夕もやにボーっと霞んで見えるんです。
  どうです!たまらんでしょう。 私にもうチョット文学的才能が有ったらここで皆さんを夢見ごこちにして
 差し上げたいのですが、残念であります。 まあそんな訳で今回はこの衣張山の由来などについて某
 書より引用してお開きにしたいと存するのであります。 
 
   衣張山(きぬばりやま)の眺めと山名について
   標高121メートルの山頂の眺めは、西に丹沢、伊豆連山、遠くに富士。眼下の鎌倉の街も小さく見せ
  て、南に相模湾の海原がひろがり、その先に煙はく大島を大きく見せる。東南方は三浦半島の臥山が
  のびて、東京湾を越えて房総半島が横たわる。北方は茂り濃い鎌倉のミニ長城をまたいで、京浜間の
  街並みがかすむ。この山の名のそもそもは、盛夏に頼朝が、山面に白絹を張りめぐらして、雪の降り
  かる情景をつくり、それを眺めながら歌会や酒宴を開いた、その伝説から生まれたという。
                           
    (集英社文庫 「誰も知らない鎌倉路」 御所見直好 著より)
                                                                 (01.02.03)
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