第7回「総天然色“LPレコード”のアナログ感に酔いしれる」 〜わが青春のソノシート・コレクションを見せびらかしちゃおう〜 昭和30年代に登場した、音付きグラビア誌とも云うべきソノシートをまだお持ちでしょうか? 先日、古いレコード盤を整理していたら押入れの隅っこの方にぼろぼろのダンボール箱に入ったソノシートを見つけたのであります。なんとこれが私の青春時代の匂いがギッシリ詰まった“宝の箱”だったのです。 私が高校生になった昭和36('61)年頃、「英語に強くなる本」と言う本が大ヒットしました。「うん、うん、憶えてるよ。」と云う方もかなりいらっしゃるんじゃないかと思うのですが。 まあ、とにかく大変なベストセラーでありましたな。この頃にいわゆる団塊の世代と云われる連中が大挙して中学生となり、英語教育が盛んになったせいでしょうかね。そしてこれらが影響してかどうか、その当時あった学年誌(中一時代とか中一コース等々)の付録として英語の発声を入れたソノシートが付いていたものです。わたしなぞはその付録のソノシートを聞かなくちゃ英語の勉強が出来ないなどと云ってレコードプレイヤーを親にせびって買ってもらいケーシー・リンデンの「悲しき16歳」やニール・セダカの「恋の片道切符」を夢中になって聞く一方で裕ちゃんのソノシートをせっせと集めたもんです。 ソノシートについてインターネットで検索してみたらこんな解説がありました。 「シートレコードは、レコード盤と同じ原理で音を出す、“ペラペラの”塩化ビニル製シート。「ソノシート」というのは朝日ソノラマの商標だが、その呼び方で広く知られている。 日本での歴史は、雑誌とシートレコードを組み合わせた月刊2誌、コダマプレスの「KODAMA」と、朝日ソノプレス(後に朝日ソノラマに社名変更)の「朝日ソノラマ」が相次いで創刊された59年に始まる。 ニュース音声、音楽、英会話、作家の自作朗読など様々な音が録音されたシートと雑誌の組み合わせが人気を呼んだ」 (asahi.comの文化・芸能トピックスより。)等々インターネットでソノシートを検索するとまあ驚くほど沢山のサイトが有り、とても面白いマニアックなページなんかも有りますので是非お試し下さい。 ところで今回は “わが青春の宝箱”の中にあの懐かしきアナログ感溢れたソノシートを折角見つけ出しましたので、「鎌倉キネマ堂」ファンの方ならきっと喜んで頂けるだろうからチョットだけ見せびらかしちゃおうか、などと一人ほくそえんでいるのであります(ウヒヒヒヒッ)。しかし果たして、このわたしにとっての宝物をここで紹介して良いものかどうかと、大いに悩み葛藤しているのであります。 それから、このお宝を自分の物にしたいなどとう云う人にはこんな警告を発するべきではないかと思ったりもしているのです。「ソノシートは何といっても音は良くないですよ。いい音で聞きたいならCDを買って聞いた方がいいに決まってます。」「ソノシートに入っている当店のスターの歌は大抵CDになっているはずですからね。」「それにレコードプレイヤーをお持ちですか?プレイヤーがないと掛からないのですよ」などなど・・・ わたしの高校生の頃の小遣いは月に2,000円も貰っていたんでしょうか、とにかくレコードを買うなんてなかなか大変なことでありましたな。ドーナツ盤と云っていた17センチのシングル盤が邦楽290円、洋楽350円で、10インチ(25センチ)LPが1,000円で30センチのLPが1,500円〜2,000円って云うところではなかったでしょうか。そんな訳ですから380円前後のソノシートを買って、それこそ擦り切れるほど聞いたもんであります。 ソノシートはまあ雑誌の付録みたいでLPを持っている友達にはチョット引け目を感じたりしたもんですが、グラビア誌のようになっていて写真がいっぱい載っているし、またシート自体がカラーピクチャーだったりして、それはそれはでわたしは大好きでありました。 さあーて、どれからご紹介しようかと大いに悩むところなんですが、まあ何んてったって「石原裕次郎の本」のコーナーを売り物にする当店ですからやはり裕ちゃんのものから行きましょう。何しろ裕ちゃん狂のわたしは少ない小遣いの中から食う物も食わずせっせと裕ちゃんのソノシートを集めたもんでありますが、友達に貸して戻って来なかったものや引越しをする度に何処かに行っちまったものも幾つかありますなぁ。だから今回この原稿を書くために吉見にうるさく云って幾つか買い集めたものもありますが、しかしなかなか欲しいものは見つかりませんでした。(クヤシ〜ぃ。) ではまず、わたしが一番好きだった「裕次郎ヒット曲集1」からゆきましょう。これは剄文社と云うところが出しているもので、ソノシートとは云えないから“カラーフォノ”と名付けられていますな。 表紙の右上には“総天然色LPレコードNo.16”なんて書かれています。そして右下には“本誌独占”とも書かれているのです。凄いですねぇ“総天然色LPレコード”という表現は。この3枚のソノシートがそれであります。どうです正に言い当てているではありませんか。 「天然色LPレコードについて」 如何ですか?あの当時はレコードは本当に高価なものだったのです。当然あの頃はまだカセットもビデオもない頃ですからレコードをコピーしたり、テレビを録画するなんて事は想像すら出来なかったのであります。それだけに今みたいなコピー文化の時代と違って物を大事にしたもんですな。ふ〜む、やはり何でもコピーできるデジタルの時代は問題です。今や音楽も映画もインターネットで配信出来てしまうんですから驚くと同時に、何か形としての存在感の無い空しさを感じますなぁ。だからこうして当時のままの形で、当時の音を聞かせてくれるこのソノシートはわたしの宝物なのであります。 さて、それでは裕ちゃんのもをドーンとをご紹介しちゃいましょうか。こちらは裕ちゃんの専属のレコード会社テイチクの出版による“テイチク フォノ グラフ”であります。レコード会社がレコードが高価で買いにくい時代に、この買い易いシートレコードを発売すると云うのも実に大らかなもんであります。(それともレコードの宣伝の一環と考えたのでありましょうか?) “裕ちゃんとたのしく”シリーズは第9集までと特別編が一つの全10集あります。(第4,7,8集はどうしても見つかりませんでした。)全て22ページ仕立てで、センターページが見開きのカラーグラビアになっており、シートレコードが4枚セットであります。その他「夕陽の丘」「クリスマス特集」等が有りますが剄分社のものと比べるとやはりレコード会社のものらしく歌が中心になっております。 さて次に私の手元に多く残っているソノシートは赤木圭一郎。そうですトニーのものです。トニーはこれからと云う時に亡くなったのでその追悼作品が随分出ておりますが、今手持ちのものを並べてみると次の通りです。その中で最も話題になったのがこの「さよならトニー」であります。 Seet1:「抜き射ちの竜」サウンド・トラック主題歌「黒い霧の町」 Seet2:対談/霧笛が俺を呼んでいる/野郎泣くねえ Seet3:若さがいっぱい/ウエスタン/流転 この剄文社の赤木圭一郎のシリーズは第五集まであり、全て20ページ立てカラーピクチャー その他にこんな豪華な箱入り全集やハードカバー写真集仕立てのものもあります。 さて、これが凄い! 裕次郎・旭・錠が揃い踏みの“日活スターヒット・パレード” Seet1:石原裕次郎「アラブの嵐」 主題歌:でっかい青空&サウンド・トラック エジプト・ロケみやげ話と挨拶 Seet2:宍戸 錠「メキシコ無宿」 主題歌:メキシコ野郎&サウンド・トラック メキシコ・ロケみやげ話と挨拶 Seet3:小林 旭「渡り鳥北へ帰る」 主題歌:北帰行&サウンド・トラ
このほか加山雄三、水原弘、橋幸夫、西郷輝彦 等々の映画スター、スター歌手のもの他 その中でも次の3つのソノシートこそが私の甘酸っぱい青春そのものなんです。(ウルウル) この頃は、それこそ第一次フォークブームで「パフ」や「ドンナ・ドンナ」の向こうを張って和製フォーク「バラが咲いた」「若者たち」が登場し、当時の若者はやたらフォークギターをかき鳴らしたもんです。わたくしも負けずに友達からギターを借り、このソノシート「フォーク・ギター教室」を買ってチョットばかりフォークの真似をしたのですがなんとも指が短くて弦がしっかり抑えられないのです。嗚呼これは私には向いていないとスッパリあきらめ、裕ちゃんがあの名作「鷲と鷹」のなかで弾いているウクレレなら弾けるだろうと380円の「ウクレレ上達法」のソノシートと古道具屋で1,500円のウクレレを買って練習したのであります。今度は指もとどくし、弦も4本なので抑えやすく何とか弾けるようになり何処へ行くんでも小林旭じゃないけどウクレレを抱えていったものです。 それから、これが究極の“我が青春の象徴”とも云うべきフォークダンスなのであります。上のリストに元祖歌謡界の御三家「橋・舟木・西郷」のソノシートのうち「高校三年生」を歌った舟木一夫のものが無くなっているのが実に残念なのですが、あの歌詞の中にもある通り♪僕らフォークダンスの手をとれば 甘く匂うよ黒髪が〜 なのでありまして、女の子の手を握れるのはこの時しか有りませんからもうドキドキしながら女子高の学園祭に行ったもんです。ちなみにこの時、わたくしも丁度高校三年生でありました。「オクラホマ・ミクサ」も〜ぉ、たまりませんなぁ。 |