前回の“鎌倉おもいつ記”へ 第4回 雨に咲く花 “紫陽花づく”しは如何が? 司馬遼太郎さんの「菜の花忌」に続いて石原裕次郎さんの「あじさい忌」が間もなくやってまいります。 鬱陶しい梅雨時の気分をシットリと慰めてくれるのがこの紫陽花の花であります。 これほど雨に似合う花はありせんな。 雨が降っていたほうがかえって生き生きしており、
雨の中では輝いて見えたりします。 6月17日の日曜日、梅雨真っ只中、久々のお天道様が顔を出しました。 ヨーシッ、紫陽花ハントに行こうと思い立ち腰にカメラをぶら下げて出かけたのであります。 先ずは我が家近くの報国寺を目指します。 この報国寺に至るまでの“田楽辻子(でんがくずし)の道」は報国寺に近づくにつれて狭くなってゆくのですが、その狭まった両脇に何気なく咲く紫陽花になかなか味わい深いものがあるんですな。 この紫陽花の色と云うものは淡い空色から青紫そして淡紅色へと七変化するのだそうです。そしてどの花もみんな曇り硝子を通して見たような淡い色合いで目に優しく、しっとりと品よく咲いておる、のであります。 報国寺の前の道を金沢街道の方とは逆方向に歩きます。 ゆるい上り勾配が500メートルほど続くこの道は両側を山に挟まれた谷(鎌倉では谷戸“やと”と云ったりしますが。)になっており、右側には山からの湧き水や雨水が流れる自然の水路があり心地よいせせらぎが聞こえてきます。 水路の壁の山肌は湧き水が滲み美しい苔が輝いています。 (7月に入る頃になると紫色の可憐なイワタバコの花が見られます。 ) いつ来てもこの谷間の道はひんやりとしていて、草木の匂いが胸に染み透るような実に気持ちの良い処なのです。 (実は私の秘密のジョギングコースなのであります。) 鎌倉の紫陽花と云えば北鎌倉の「明月院」とか長谷の「成就寺」とか階段とセットになった紫陽花が良く紹介されておりますがどうです? こちらの“階段のある紫陽花”は。 そんな訳で夢のような曼荼羅堂も夢となってしまい途方にくれたわたしはトボトボと“名越の切り通し”を踏み切りの方へと下りてまいりました。 そして横須賀線の線路が鎌倉駅へと伸び長勝寺の金色の屋根が見える処まで来た時、「そうだ!あそこには裕ちゃんの弟分の赤木圭一郎の胸像があり、確か今の時期は紫陽花の花に包まれているはずだ。」と思い付いたのです。 果たして紫陽花がトニーの周りに咲いているだろうかと、多少の不安を抱きつつも、すっかり気分は晴れて足取り軽く長勝寺に向かったのであります。 裕次郎さんの「あじさい忌」を迎えようとするトニーの横顔であります。(しばし黙祷) と云う事で今回の“紫陽花づくしの巻”はこの辺で、、、。 (01.06.19) “鎌倉おもいつ記”第5回へ |