![]() 第2回 「裕次郎本に愛をこめて」 前回の“店主のくりごと”へ わたしは日本映画の大ファンなんですが邦画ファンと言っても小難しい芸術映画じゃなくて、あくまで 石原裕次郎に関する本は彼が亡くなってから追悼記念として随分たくさん出版されたんですが、その中には既に使い古された伝説とも言うべきエピソードをただ羅列しただけなんて云うつまらん本も有るし、更にそんな本の中から書き移したようなものまであって著者の厚顔にあきれるばかりか、裕次郎ものなら何でも商売になると考えているあまりにも無知な編集者にはメチャクチャ腹が立つんですな。しかしまあ、裕ちゃんファンのわたくしとしては必死になって集めてきた本を当“鎌倉キネマ堂”でコーナーまで作ってズラリッと並べたんですからお客さんにはぜひ覗いて頂きたいのでありまして、そこで今回はチョイト裕ちゃん本のご案内までという事でご勘弁のほどを。
さて、次に@の「デビューからスターへ・裕次郎物語本」をリストアップしてみると ◎「ターキー放談 笑った、泣いた」 水の江瀧子(‘84文園社) ◎「ひまわり婆っちゃま」 水の江瀧子 (‘90婦人画報社) ◎「みんな裕ちゃんが好きだった」 水の江瀧子 (‘91文園社) ◎「窓の下に裕次郎がいた」 井上梅次 (‘87文芸春秋社) ◎「俺の裕次郎・日活宣伝マンの熱い日記」 小松俊一 (‘89にっかつ出版) ◎「弟」 石原慎太郎(‘96幻冬社) ◎「石原裕次郎物語」 鈴木義昭著(‘89近代映画社) ◎「裕次郎・君は冬のカモメか」 加藤康一 (‘87朝日放送出版) ◎「石原裕次郎」 木下英治 (‘88勁文社) こんなところが石原裕次郎のデビューからスター街道を突っ走る辺りを描いた本で、裕次郎誕生秘話とも云うべきエピソードが色々出てきて最も面白いところなんで、この辺りの本の中から裕ちゃんのエピソードで信憑性の高い本をいくつかご紹介しましょう。 裕次郎のデビューについてはもう誰もが知っているように兄石原慎太郎が文壇に華々しく登場した芥川賞受賞作「太陽の季節」の日活における映画化がきっかけとなっているのはご存知の通りですが、ただこの映画化に関するエピソードや裕次郎デビューのいきさつが本によって少しずつ違っていたりするんですね。(まあそれを色々比較しながら読んでみるのも面白いんですが。) 先ず裕次郎が映画界に登場する話に関しては育ての親である水の江瀧子さんの本がなんと言っても信憑性がありまた面白いので、この水の江瀧子の三冊の本を取り上げる事にしちゃいます。 “私が見つけたキラ星青春スターたち” “いまだから話せる石原裕次郎のロマンス・事件・騒動” “日活黄金時代の原動力となった青春スターたち” 等々 ターキーの奔放な喋りっぷりで実に楽しく読ませてくれます。 自分の事をアチシと言って伝法なべらんめえ調で語る彼女の話の端々に裕次郎に対する育ての親としての愛情が滲み出ていて、こちとら不覚にも涙が滲んできてしまいます。この本は裕次郎と日活の事ばかりでなく帯に“石原裕次郎から萩本欽一まで総勢64人の裏話”と謳われている通り芸能人からスポーツ選手そして文壇の人まで登場し、その人脈の広さにターキーが如何に大スターであったかが窺われると共に、そんな大スターであったからこそ大スターを見出す事が出来たのだろうと納得してしまうんですな。 次に、「ひまわり婆っちゃま」は水の江瀧子の少女時代からSKD時代、日活プロデューサー時代そして現在(‘88年初版)までの聞き書きによる自叙伝です。帯に「ジュエリー・アーチストとして次なる人生を歩み始めた、悠々自適の“仙女”が語る70年。」とあります。 第六章 「面白かった日活プロデューサー時代」では たとえばこんな語りに、「裕ちゃんは、慎太郎さんが言うほど不良少年じゃなかったと思う。悪いと言っても、本当に悪いことするんじゃなくてね、今の子どもは右向けって言えば全部右向く、その中で一人左向いてたっていうような、そんな感じの人よ。本当に悪いことやってると、汚れが出るんですよ。どんなにすまして、いい顔しててもね、影で悪いことしてると必ず絵(映像)に汚れが出ます。でも、裕ちゃんは汚れが出ないんですよ、ちっとも。」 初期の裕次郎映画13本を取り上げそれぞれの作品の監督やスタッフ達が裕次郎と水の江瀧子そして作品について語ると言う構成になっていて実に生々しいお話が聞けるんですな。昭和三十年代はさっきも言った通り日活のみならず日本映画戦後黄金時代で、毎週二本立て興行で撮影所はフル回転していて、裕次郎クラスの大スターになるとなんと月に一本以上のペースで主演作品が作られ殆ど撮影所に入り浸りの状態だから俳優とスタッフの結びつきはかなり強かったんでしょうね。そんなたぎるような映画作り、スター作りに対するスタッフの熱気と思い入れがこの本からズンズンと伝わってきてもう嬉しくって眠れなくなっちゃうんですね。それでは、この本に取り上げられた裕次郎映画をリストアップしてみるてぇと。 (どうも何故か志ん生になっちゃうな。) 「太陽の季節」「狂った果実」「嵐を呼ぶ男」「俺は待ってるぜ」「錆びたナイフ」「陽のあたる坂道」「紅の翼」「清水の暴れん坊」「鉄火場の風」「やくざ先生」「闘牛に賭ける男」「銀座の恋の物語」「憎いあンちくしょう」の13本。 尚、この中で「嵐を呼ぶ男」と「陽のあたる坂道」は水の江瀧子プロデュースではないのです。その辺の事情を井上梅次監督が本書の中で「これは僕らには分からない会社と水の江さんの問題なんですけど、せっかく裕次郎を見つけながら、ご不満だったかと思うんですがね。」と微妙な発言をしています。 さて、紙面の都合上、いやあまり長くなってもなんですから今回はこの辺で失礼をば。 |